阪神大震災時の阪神高速道路崩壊以来、 首都高速で疲労亀裂が多数発見され大がかりな補修工事が行われています。
 
  また新幹線開通後40数年経過してきていることから、インフラの鋼構造物の設計・施工の見直しと同時に現在健全な構造物の疲労回復や延命策を安価なコストで実施し、大幅なライフコスト低減を図ることが社会的に要求されます。

 カナダのIntegrity Testing Laboratory Inc.(ITL社)は、このような観点からアメリカのthe Ohioの架橋の延命策として超音波ピーニング(UP)を2004年に施工を実行しました。

 



オハイオ川架橋の延命策(UP処理状況)

  ウクライナのパトン溶接研究所で研究開発されてきた技術を基に、カナダのITL社が省エネ型のセラミック振動子を採用したUPシステムです。

  独自のセラミック振動子とピーニング用打撃子により
溶接継手部の残留応力を圧縮応力に変換し、かつ溶接
止端部の応力集中を減少して溶接継手の疲れ強さの向上を図ります。使用材料、構造物形状および荷重状態により最適な施工条件を選定すると共に疲労寿命も推定できるソフトも用意されています。


超音波発振器、ピーニング本体、
ソフトウェアからなるUPシステム

   ●全重量5kgと軽量で現場作業が容易です。

   ●消費電力300w(100V仕様)と経済的です。

   ●ロボットにも容易に搭載できます。


UP本体のロボット搭載

 
 従来の溶接継手の疲れ強さは軟鋼でも高張力鋼でも同じであったため、疲労設計が重要な構造物には高張力の使用に制限がありました。超音波ピーニング処理により高張力鋼の溶接継手の疲れ強さは強度に比例して向上しますので、重要部材への高張力の適用も可能になります。

1−溶接のまま(全鋼種) 3−鋼材 1 (σu=270MPa )
  5−鋼材 2 (σu=370MPa ) 7−鋼材 3 (σu=615MPa )
 9−鋼材 4 (σu=864MPa )  ( 3,5,7,9 は UP 処理後)

  高張力鋼溶接継手へのUP処理による疲労強度の向上


  さらに繰り返し荷重による疲労損傷を受けた溶接継手(亀裂発生以前)にUP処理を施すと疲労回復が起こり、溶接直後にUP処理を施すより長寿命化が図られます。従って、長期間使用された鋼構造物の延命策にも有効な施工法であることを示唆しています。



UP処理による疲労回復と長寿命化の一例

  なお、他にほぼ同じ性能を有するマグネット式の超音波ピーニング装置(UIP)があり、アメリカのリーハイ大学でその有用性が実証されています。このように、超音波ピーニングはやっと実用化の段階に来た技術ですが、現存するインフラの延命策として採用しライフコストの低減化を図る上で必要不可欠な技術です。

  国内においても、実用化研究や実際の構造物に施工する実物実証実験などが進むことを切望し、弊社はITL社製UPシステムの日本代理店を務めています。

UPシステムの他への適用例(ITL社での)  
1)鉄鋼製ホイールの断続溶接部のスタート部と終端部にUP処理を施すと寿命は3倍に。
2)自動車用鍛造製スプリングへの適用により材料の軽量化と6年間の保証を可能に。
3)機械加工品の歯車底部側面への適用による残留応力の除去。
4)材料表面層の結晶粒のナノ化。
等いろいろあります。